来日して疲れ果てていた時に体験した『アズレン』2周年イベントが原点 ミニゲーム「クーちゃんれすきゅー!」制作秘話
「コントローラーに被せるストッキングは肌色?それともクーちゃんだから黒の方が良いんだろうか……。」
これは立場ある、いい大人達が、ガラス張りの会議室で、真面目に議論している一幕です。議題はコミックマーケット104でお披露目した『アズールレーン』のミニゲーム「クーちゃんれすきゅー!」のコントローラーについて。同タイトルに登場するKAN-SENクーちゃん(パーミャチ・メルクーリヤ)が、気持ちよくなってもらうために作ったものです。
今回企画・制作にあたったのは、Yostar運営部Lさん。過去Yostar Plusにおいて、車をオフィス化した漢としても特集を組まれたツワモノのLさんです。
クーちゃんに気持ちよくなってもらうゲームに、その専用コントローラー。何がきっかけでこの企画が誕生したのでしょうか。実に『アズールレーン』らしい、どうかしている本企画について、Lさんに聞きました。
指揮官のみなさま、こういうのがお好きなんでしょう?
――:Lさん、こんにちは。今日は「クーちゃんれすきゅー!」について聞きに来ました。なんでまたこの際立ったミニゲームを制作することになったのでしょうか。
「クーちゃんれすきゅー!」は、『アズールレーン』のコミケブースに出展するミニゲームを考えて欲しいと依頼があったのが、きっかけです。
その日から完全にミニゲームのことばかり考えるようになって、四六時中どんなゲームにするか浮かべては消しての繰り返しの日々を過ごしていました。
良さそうなアイデアが出たら同僚に聞いてもらい、フィードバックをもらったりしていました。
そんな試行錯誤と日々浮かべた良質なアイデアのピースを集め、『アズールレーン』というタイトル、そしてコミックマーケットという場に向けて融合させてできたのが「クーちゃんれすきゅー!」です。
その根っこにあったのは「指揮官のみなさま、こういうのがお好きなんでしょう?」ですね。
――:なかなか際立った内容だと思うんですが、企画はすんなり通ったんでしょうか?
すーーっと通りましたね。Yostarらしさを感じた瞬間でもあります。「クーちゃんれすきゅー!」の企画書を出してみたら一瞬でOKが出て、音声や3Dの収録のスケジュールと各部署が一気に動き出しました。
ゲームの企画・制作は未経験だったので、幾度もなく壁にぶつかって方向修正を繰り返しましたが、結果として企画当初に考えたものに近い色のゲームができて本当に嬉しかったです。
――:コントローラーの試作品なんかも作ってましたね。たまたまその試作品を見かけたんですが、当初はなんだこれって思ってたら、用途が想像以上に際立ったものだった(笑)。
「クーちゃんれすきゅー!」はコントローラーで遊ぶからこそ楽しめる設計にしたかったんです。だから企画初期からコントローラーを主軸として仕様を決めていきました。
開発中にはレバーを左右に置いて「両手で揉みしだく」ことや、例の巨大マウスパッドのようなムニュっとしてBIGな何かに感圧センサーを仕込んでペチペチするプロトタイプもありました。
素材を探すために同僚と一緒に秋葉原の色々なショップを貪りましたよ(笑)。
――:秋葉原は本当に”色々な際立った”ショップがありますからね。レバー部分はシリコンですよね?
シリコンでできた球状のものです。言及は避けますが、アイディアのタネはお察ししている通りかもしれません。材質が決定してからは、筐体の強度や耐久性、遊びやすさなどを考慮して、現在の形で落ち着きましたね。
――:コントローラーから設計したとなると電子工作を学んでいたとか?
専門的に学んでいたわけではありませんが、電子工作が好きなんです。オフィスでもある車内をかなりいじっていますし、今回はその経験が活きたと思います。とはいえコントローラーは初制作なので想定外のことが多く起こりました。
ホームセンターのDIYコーナーでコントローラーを組み立てようとして何度も失敗し、泣きそうになったり……。
静かにキーボードの音だけが響くオフィスで、ひとり寂しくシリコン玉に絆創膏を貼っていたりして、途方に暮れることもありましたね……。
――:姿は想像できます(笑)。今回のコミックマーケット104では、そんな経験を経て出来上がったコントローラーで遊ぶために待機列までできていましたね。20分待ちの案内が出ていました。これまでの苦労も報われたんじゃないでしょうか。
私も現地に居たんですが、みなさんがとても楽しそうに遊んでいる様子を見れて感無量でした。リザルト画面が表示され、ニヤッとした顔で離れる様子も横目で見ることができてたまらなかったです。
待機列で鑑賞できるように作った動画をご覧いただいて、ふらっと遊んでいってくださる方も多く、本当に作って良かったなと。ただ初めてゲームの企画をしたこともあり、実際稼働してみて発見した欠陥もいくつかありました。
――:現地で修理してましたもんね。
部品が足りなくてホームセンターに買いにいったり、冷や汗の連続でした。ただこういう構造の際には、このサイズの部品が良いなんて経験の蓄積ができたこと、実際に来場者の方々を見てフィードバックしていくのは本当に良い経験になりました。機会があるなら、より完成度を高めていきたいですね。
Yostarは一度落ちたけど諦めなかった。気がつけばHめなミニゲームを企画していた。
――:Lさんは、今、運営部の技術支援チームにいらっしゃいますよね。
運営部の技術支援チームに所属しています。Webページやミニゲーム、アプリなどの社内開発を務める部署です。チケット販売アプリ「Yostation」のなども開発しています。
「クーちゃんれすきゅー!」の企画を立てのは私ですが、制作にはチームやYostarのみんなの協力のおかげでもあります。特に忙しい時も嫌な顔ひとつせず聞いてくれた、同僚にはすごく感謝しています。
――:どんな経緯で入社されたんでしょうか。
元々大学時代に留学で日本に来ました。就職も日本での就労を視野にしていて、実際に内定をいただいてサラリーマンをしていました。ただそこはなかなか大変な環境で……。そんな環境で疲れきっていたとき、たまたまベルサール秋葉原で『アズールレーン』の2周年イベントが開催されていました。そこでYostarを知ったことが、入社のきっかけです。
しかもこの時の体験が「クーちゃんれすきゅー!」の開発に繋がっていたりします。
――:詳しく聞きたいです。
疲れ切った状態でたまたま訪れた『アズールレーン』の2周年会場ですが、そこに集う方々の笑顔、欲望全開で率直な感想のやり取りがとても印象的で、ほんわか楽しい空間でした。そんな空間は、当時のわたしにはすごく非日常的で良い思い出としての心に残りました。
それから、”私も何かしらのコンテンツを作って誰かの思い出に貢献したい” と思うようになり、これをきっかけに後先考えずゲーム業界に飛び込んでしまいました。
なおその当時Yostarに応募しましたが、書類で落ちました(笑)。
――:そうだったんですか(笑)。
別のゲーム会社に入社し、巡り巡ってなんとかYostarへの入社のこぎつけました。入社後は『ブルーアーカイブ』などのローカライズなどの経験を積んで今に至ります。
――:ゲーム企画の企画、開発というポジショニングではなかったんですね。
そうなんです。だから今回の「クーちゃんれすきゅー!」についても、素人ながらも必死でディレクションをしました。未だに実感は湧いていません。
――:『アズールレーン』2周年のイベントの体験から、最終的にはミニゲームを提供できたというのは、Lさんにとっても大きな経験でしたね。
コミックマーケット104の当日は、物凄く暑い日々でした。多くの人にご来場いただいたこともあり、待機列に並び体験してもらうゲームになりました。そんな中で、来場者みなさんのそれぞれの形で楽しかった思い出として残っていたら嬉しいです。
――:今後はどんなことをしていきたいですか。
個人的には秋葉原にある某クラブなどで繰り広げられているクラブシーンが好きです。日本に留学したときには、曲を作って個人サークルで配布をしたりしていました。数あるクラブイベントの中で参加者全員がひとつになって踊って一体化する時があり、その瞬間を愛しています。
まだまだ具体的なイメージすら掴めていませんが、いつかYostarでもあのような瞬間を演出したいなと思っています。
――:新しい企画も楽しみにしています。ありがとうございました!