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オーラス最下位からの役満大逆転に大歓声 「雀魂杯 学生麻雀選手権 2023-2024東場 決勝」をレポート

栄冠を片手にかけていた選手は、その結果に天を仰いだ。この衝撃的な結末に笑うしかない選手たち。現場の運営スタッフは声を出せないため、誰からともなくお互いに目をあわせ、モニタースタジオ内では歓声が上がった。選手たちはこの状況に慣れると、拍手や一礼をもってこの偉業を成し遂げた勝者を称えた。この日、伝説を目撃した。

「雀魂杯 学生麻雀選手権 2023-2024東場 決勝」の最終戦、選手の誰もが優勝の可能性を残していたものの、オーラスの段階で、勝負はほぼ決まりかけていた。そんな中、2回戦と最終戦の最終局面まで最下位に沈んでいた白鴎大学のブラッシュ選手が、四暗刻(役満)で奇跡の大逆転を果たした。

優勝者ブラッシュ選手から東場を振り返る

ブラッシュ選手 – 白鴎大学

ブラッシュ選手の麻雀歴は3年ほど。麻雀アニメ「咲-Saki-」に影響された。麻雀を始めたことをきっかけに、自分の負けず嫌いな一面を発見した。これまでは自分のことを飽きやすく、浅くしか物事に興味を持てない性格だと思っていたという。

「守りの固さに自信がある」という強い言葉とは裏腹に、かなり控えめなトーンで自身の雀風を語っていたブラッシュ選手。だがその言葉の意味はスタッツを見れば一目瞭然だ。放銃率8.13%という驚異的な数値がその根拠を裏付けている。配信でこの数値が公開された際には、スタジオから驚きとも感嘆とも取れる声が漏れ、解説を務めた綱川隆晃プロは「皆さんがこれまで出会った打ち手の中で、放銃率8%の人間はいましたか?」と興奮気味に語っていた。

(※)なお綱川プロは過去にMリーグ出場選手のプロ雀士の試合データを見て「放銃率8%はもうギャグなんよ」とツイートしていることからも、この値がいかに異質であることかがわかる。

大会の勝利のため、いつもより少し攻めの姿勢で臨んだというブラッシュ選手。その打ち筋がハマり、1回戦をものにしている。

ただ続くファーストステージ2回戦では最下位に沈んだ。「うまく打てなかった」「焦ってしまった」と反省の言葉が並んだ。「オーラスではラス(最下位)を回避するため5sのポン発進をした。試合後に思い返せばリスクとリターンが見合っておらず、あの時は焦っていた」と自身を分析した。

そして最終戦。ブラッシュ選手は2回戦の敗北を引きずるかのような状況が続くも、そこに諦めはなかったようだ。オーラスでは、これまでの鬱憤を晴らすかのような会心の四暗刻を決め、大逆転優勝を導いた。

ブラッシュ選手は「2試合目と3試合目の最後までは辛い手が続いていた」と振り返り「自分でもびっくりした」とまだ自身の偉業を信じられない様子。

綱川プロはブラッシュ選手について「役満をツモって逆転した。裏を返せば逆転できる点差にいたということ。多々あったピンチにおいて、どれか1つでも放銃していたら、届かない点差になっていたかもしれない。これはブラッシュ選手の放銃率の低さが生んだ結果。大会用に攻めの姿勢を見せた戦略変更もうまくハマった完璧な優勝だった。」と称賛した。

優勝者特典の1つであるエキシビジョンマッチの準備をする間、自身の試合を振り返るブラッシュ選手。
この時の状況を「自分でも信じられず、どこか他人事のように見ていた」とまだ現実感のない様子。
「オーラスで役満条件を達成した佐月プロの事を思い出していた」とも。

ブラッシュ選手が度々口にしていた「緊張」「焦り」という言葉は、傍から見れば「何をおっしゃいますやら」だ。2回戦は最下位に沈んだとは言え、綱川プロの言葉を借りれば「うまく打っていた」状況に見える。それほどまでに試合は拮抗していた。

試合から数日が経ち、改めて対局を振り返ってもらったところ興味深い返答が返ってきた。

本人によれば、当初は緊張しており実力が出して切れていなかったと感じていたそうだ。ただ「今同じような局面を迎えたとしても、結果的に同じような選択をしていたと思う」と明かしている。

「緊張の中、普段通りに打てたのは手が勝手に出力するぐらい打ってきたおかげ」と語るその背景には、好きな戦術書『鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム』が関係している。表紙の「考えられた結果を手が勝手に出力する」を実践し、見事に勝利を掴み取ってみせた。

なお7月に開催予定の「雀魂杯 学生麻雀選手権 2023-2024南場 決勝」は三麻だ。このことについてブラッシュ選手はこう答えている。

「三麻のほうが打ってきた歴は長いし、好き。」

参加選手は粒ぞろい、今シーズンの活躍に期待

歴代の中でも屈指のベストバウトでシーズンが開幕となった。ブラッシュ選手のみならず、参加選手はいずれも粒ぞろい。

kinpaku選手 – 東京大学

最終戦後半は消化試合になる可能性もあったほどリードしていた。にも関わらず、惜しくも2位に甘んじることになったのは東京大学のkinpaku選手。今大会では少し運が足りなかった。試合中、要所要所で深い溜め息を吐く姿が今回の結果を表していた。麻雀歴は2年ほどで、点棒状況に応じた柔軟なうち回しが持ち味だ。『雀魂』の段位戦を鬼打ちしていると豪語するだけあって、その数はなんと4500(半荘)にも上っている。”たった2年で”である。またインタビューにおいては、自身の試合運びの丁寧な振り返りと、確かな記憶力に基づいた分析は最高学府が伊達ではないことを知らしめた。今回の敗戦を糧に、どのように飛躍を遂げるのか非常に楽しみな選手だ。

Sashimilk選手 – 長野県松本県ヶ丘高等学校

3位の長野県松本県ヶ丘高等学校Sashimilk選手。今大会、唯一の高校生選手で、普段はサッカー部に所属している。本大会とサッカー人生最後の大会の日程が被ってしまった。本大会へは「2度とない機会かもしれないから行ってこい」とチームメイトから送り出されて参戦した。その想いも背負って雀魂の大会に参戦した。「年齢に関係なく対等に戦えるのが麻雀のおもしろさ。そのおもしろさを結果で伝えたい」と語っていた。試合結果後にも、サッカー部の監督とチームメイトに感謝の言葉を口にし、最終戦で四暗刻での逆転が起こった際にも、真っ先に勝者に拍手を送っていたのが印象的だった。初戦は最下位に沈むも、2回戦ではハットトリックを決め首位を獲得した。麻雀歴が1年ほどであることを考えると、これからの伸びしろに大きく期待が持てる選手だ。

ゴンベりん選手 – 愛媛大学

そして残念ながら4位にとどまったゴンベりん選手。麻雀歴は1年ほど。愛媛大学「愛雀会」に所属し、すでに代表を務めている。超攻撃型と自負し、「押し切って勝ちたい」「降りないときは降りない」と語る攻撃型の選手だ。トップ率とラス率の高さはその言葉通りだろう。なお所属する愛雀会では、少なくともあと5人は自分より強い人間がいるとしており、実際に本大会でも、同サークルの人間が多数予選を突破するなどの実績を見せた。そんな猛者の中で打ち続けられる環境が今後どう影響を及ぼすのか、「愛雀会」の動向も含めて注目したい。

綱川隆晃プロ – 日本プロ麻雀協会
「人間は勝ったときよりも、負けたときのほうが成長できる。オーラスで役満をツモられて、まくられる経験は僕でさえ無い。そんな得難い経験をした。他の人ができない経験を。今後にぜひ活かして欲しい。」と声をかける。

【出演者(敬称略)】
MC:咲乃もこ(Vtuber)
解説:綱川隆晃(日本プロ麻雀協会)
ゲスト:朝陽にいな(Vtuber)

そんな伝説が誕生した試合のアーカイブはYoutubeで配信中。リベンジを誓うもの、2冠を狙うもの、様々な想いを胸に、若き雀士たちは7月の南場に向けすでに動き出している。

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