MENU

アニメ制作会社Yostar Pictures5周年記念インタビュー!これまでの5年とこれからの5年に向けて

アニメ制作会社Yostar Pictures(YSP)は、2025年1月31日で設立5周年を迎えました。いつも様々な映像作品をご覧いただき誠にありがとうございます。

今回のYostar PlusではYSP設立5周年にあたって、Yostarの代表でもある李衡達社長、Yostar Pictures取締役の稲垣亮祐さん、同じく取締役の斉藤健吾さんにインタビューを実施。Yostar Picturesのこれまでとこれからを聞きました。

※写真は左から稲垣亮祐さん、李衡達社長、斉藤健吾さん

気がつけば5年、制作は最大4ライン。反省する点も

――:本日はよろしくお願いいたします。 この度、YSPが設立5周年を迎えました。まずは率直なお気持ちを聞かせてください。

斉藤:5周年ということを特別意識しておらず、一瞬でここまで来たなという気持ちです。

:世の中的にも(コロナ禍という)激しい流れの時期が2年ほど含まれておりますので、正直5年分やり切ったという充足感はありません。ただ、公開した作品を数えてみると、確かに5年分の足跡を残してきたのだという実感は湧いてきますね。

稲垣:直近でも気づけば4つ同時に制作ラインが動くという状況ができてしまったのですが、それも乗り越えられたという達成感があります。

:僕の強い意志もありました(笑)。

――:(笑)。

:語弊があるかもしれないのは、ずっと4ラインで走っていたわけではなく、実際はだんだん重なってしまったという感じですね。

稲垣:テレビシリーズ4タイトルの制作が同時に重なるというのは、どんなアニメ会社であっても厳しくはなる状況だと思います。それでも、まだ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』の作業は少し残ってはいますが、これもハイクオリティに出来上がってきている状況ですので、なんとかみんなで乗り越えてくれました。そう考えると「全力で走っているうちに気づけば…」という感じで、5年経ったという実感は確かにあまりないかもしれないです。

――:そんな無我夢中で駆け抜けてきた5年間の中で、思い出深い映像やエピソードなどはありますか?

斉藤:僕は『空色ユーティリティ』の短編かなと思います。設立当時、なるべくやりたいことをやらせてもらえるような状況にしていきたいと話をしていたので、その走りがあの作品だったのかなと。「こういう短編をやりたいんですよ」という企画書があって、李さんに見せた。そこから始まったというのが、僕としては一番思い出深いです。

――:それは設立経緯でもあるYostarのゲーム関連映像のみを手掛けるだけに留まらず、「これからは新規オリジナルIPもやっていくぞ」という心構えがあっての動きだったのでしょうか?

:当時はそこまで深くは考えてなかったですね。

稲垣:2021年に初めての取締役会で一堂に会した際に「これをやりたいです」という話が出たんです。

:YSPのスタートラインとしては「Yostar運営タイトルの映像を」という話だったのですが、ゆくゆくは他社様の案件も受け入れるし、自社のオリジナルタイトルもリリースして、Yostarのタイトルに紐づかなくても一アニメ会社として運営していけるようにするというビジョン自体は当初からありました。ただ、このタイミングでオリジナルアニメを出すことは自分たちの力を試す意味もありましたし、自己満足という気持ちもあったと思います。

まだ業界に参入して経験の浅い会社ですし、ビジネスの観点ですぐにもとは取れないと考えていたので、基本は赤字覚悟でチャレンジしていました。オリジナルタイトルはスタッフのモチベーションに繋がるプロジェクトでもありますし、リスクを背負ってでもちゃんと面白い作品を出す義務があると思い、それほど迷いはなくほぼ即答でOKしました。

――:そういった過程もあり、『空色ユーティリティ』が制作されたということだったんですね。

斉藤:そうですね。そこから2021年内に一気に制作をして、同年末には短編作品として放映することができした。そして、それをご覧になった当時ポニーキャニオン(現HI Production)の伊藤プロデューサーから「あれTVシリーズで動かないんですか?」という話もいただいて。そこからはあれよあれよという間にTVシリーズも制作することに…という感じです。

――:稲垣さんは当時の状況をどのように見ていましたか?

稲垣:10分ぐらいの作品であれば、斉藤くんは前職でも一人で手掛けていたんです。僕も短編を何本も作ったことがあるので、工数の想像もつく。一人でやれるんだったら現場のリソース的にもすぐにいけると思っていました。李さんのOKも出ているし、やりたいことをやってみたらと。迷わず進められました。

――:お互いに経験として分かっていたからこそできたということですね。

稲垣:そうですね。たくさん作品を作った方が、多くの人に見ていただけるかなと思いました。その前年の2020年末には『アークナイツ』の1周年記念アニメ「Holy Knight Light」を公開していましたし、年末年始のタイミングでYSPとしてまた何か面白いことをやれたら、という部分もありましたね。

斉藤:『空色ユーティリティ』の短編は、それこそ大晦日の夜放送でした(笑)。今年も年明けすぐの1月3日から、TVシリーズとしての『空色ユーティリティ』第1話を放送しました。三が日から新作TVシリーズが始まるのは珍しいと思いますが、製作委員会の方々も含め皆さんが色々な調整をしてくださって、計画的に1月3日からのスタートにしたという経緯があります。

――:李さんはこの5年で思い出深い映像はありましたか?

:先ほども話題にあがった「Holy Knight Light」が一番インパクトがありました。それまではショート作品だったり、ゲームのCMとしての性質を持っているものを作っていたのですが、このタイミングでひとつ物語性のある映像として「Holy Knight Light」を作ったことは、今後30分枠のTVシリーズなどを制作しても通用するかどうかの検証としても大きかったです。

当時、会社を立ち上げて1年前後ということもあり、社歴が浅い中でそういったものが作れるのであれば、次はもう少し予算をかけて良いものを作れる体力が付いたかなという雰囲気を感じました。それが、僕にとっては大事なことでした。

――:そこを起点として見通しが立てられたと。

:そうですね。より広いステージに向かって行こうかなと考えました。あの時期に、在宅メインの環境の中でこのレベルのものを作れるのであれば、会社としてのマネージメントも問題ないという証明になります。いろんな軸で見て重要性の高い作品だったと思います。

――:確かに、当時はコロナ禍で皆が在宅ワークで、これまでの業務の進め方が一気に変わってしまった。そんな中でちゃんと1本のものを作れるのかという不安もありそうだと思っていました。

:コロナ禍では、明らかにスケジュールの管理が難しくなったと思います。だからこそスケジュールを落とさずに、計画通り進められたことが、経営者視点では一番重要なポイントになりました。もちろん、当時はTVアニメの制作を行っていなかった点は差し引いて考える必要がありますけど。

――:稲垣さんはいかがですか?

稲垣:僕は上手くいかなった部分を振り返ったうえで、もっと成果を上げれたのではという反省をしたいです。これまでは結構上手く回っていたのですが、作品が増えるに連れ、徐々に当たるべくして当たる壁が出来てきました。今はその部分をなんとかする、ということしか頭にないです。

:『空色ユーティリティ』など、Yostarが運営タイトルとして関わっていない部分に関しては、割と冷静に見れる部分もあります。それに対してYostar本体が運営しているゲームに関する映像は、アニバーサリーだったり、ゲームの動きとジャストなタイミングで連動させる必要がある場合が多く、どうしてもそこを目指しがちになります。そういった点で若干の冷静さを失った部分があると思います。

時間をかけて、ちゃんとしたアニメとして一つのコンテンツを作らないと良いものはできないと思いますので、そこを課題として今後、アニメとして面白い作品を作るべきというのは反省点です。いろんな要因がありすぎるので、語れることは多くないのですが、課題を課題と認識して前に進んでいきたいと強く思っています。

YSPとしての強さ

――:YSP設立当初はかなり少ない人数で始められたと思うのですが、5年が経ち人数も増え、オフィス移転などもありました。リモートワークなど含めて、マネジメントの難しさを感じることはありますか?

稲垣:めちゃくちゃあります。やっぱり、人が増えれば増えるほど、個々に想う部分の差が激しくなってきます。そういった面で見切れない部分が出てきて、どんどん違うやり方も模索し始めているタイミングで、今はYostarのコンテンツビジネス部のメンバーたちとも「どうやっていこうか」という話をしているところです。

これからも人員も増やし続けていくことを見据えると、どうやって一丸となっていけるか、はたまた分かれて子会社化してでも上手くやっていけるかという可能性なども含めて考えていかないといけないと感じています。

人間一人で喋れる人間の量って決まってるじゃないですか。100人と同時に会話できる人はいないと思うので、そういう意味ではマネジメントに関しては常に悩んでいます。

――:そういった難しさは、どのタイミングから意識するようになったか覚えていますか?

稲垣:そこは完全にタイトル数に紐づいていますね。1~2タイトルであれば全て見られると思うのですが、3~4タイトルに増えると流石に全部は見られなくなるので、そうなると自分の意図とは違う動き方をする人が出てくる可能性も生まれてきます。全部は見きれない中で、どこまでを自分で見るか、どこからは手を離してしまっていいかの判断は常に難しいところです。

――:斉藤さんから見て、成長して人数が増えていくことでの難しさを感じられたりしますか?

斉藤:僕自身、独立して動いていることが多いので、できればもう少し後進をたくさん育てたいという気持ちは凄くあります。実際、アニメーターを育てる教導部という部署がありますので、そこで基礎的なことを教えて、そこから先に行ける子を僕の下で育ててあげられたら良いなと思っています。そうやって一人一人の馬力を上げられれば良いなと今は思っていますね。

――:教導部についてもお聞きしたいのですが、設立当初からあったものなのでしょうか?

斉藤:ほぼ設立当初からありましたね。会社を長く続けていくうえで、若い世代のアニメーターを育てていかないといけないと思っています。全員を外部から呼んでこられるわけではないので、自分たちで大事に育てて、いずれ会社の馬力になれる人たちを育てていく方が良いのではないかという考えです。

――:そのあたりについて、李さんから「こうしてほしい」という要望はあったりしたのでしょうか?

:アニメ会社としてどういう風に動くべきかという知識はないので、基本はお任せしています。アニメとゲームは異なる業種ですし、暫くの赤字は立ち上げ当初から覚悟もしていましたが…ここまで儲からないとは思っていませんでした(笑)。

アニメファンとしては良い作品が見たいですし、経営者としてはこの予算の範疇で作品を作ってほしい、昔はそのギャップに戸惑いました。そもそも相反する性質の仕事を両立させなければいけないので、バランスを取ることが相当難しい業種だと思いました。

ゲームに関しては、成果物を見るまでならそこまで時間がかかりません。一方でアニメは1クール作るにしても2年~3年弱の制作期間がかかりますし、準備期間を含めるとさらに時間が必要です。そもそもどのフェーズでどういう風に舵を切るべきかの判断基準も持っていなかったですし、なにより最終盤の工程までその全容が掴みづらい(笑)。

だからマネージメントはもう半分諦めて、潔くゲームとの関連性を切って、単独のアニメ作品として磨くしかないと思っています。だから、人のマネジメントに関してあまり口出しはしませんが、流石に赤字が出すぎるのは困るので、そこだけは見ている感じです。

――:そんなにギャップがあったのですね。

:5年経って、当初抱いたギャップが少しずつ埋まってきた感じです。もちろんそこの折り合いはうまくつけた上で、作品のクオリティ維持やブラッシュアップをどう行っていくかを考え続けています。

――:そう考えると、アニメファンでいることと、経営者として資本を見る目とのぶつかり合いは凄くバランスが求められるし、企業によって個性が出てくるところだと思います。

:赤字を出すことは全然良いのですが、相応のクオリティや価値があるかどうかはしっかりと判断します。その作品が会社のブランディングに繋がるのであれば赤字でも許されると考えていますし、会社の今後の発展に対して何の貢献もないものだと、そこはコントロールしないといけない部分だと思います。

Yostar Picturesオリジナルタイトル『空色ユーティリティ』誕生秘話

――:放送中のTVアニメ『空色ユーティリティ』についても聞かせてください。短編からどのようにしてTVシリーズへと発展していったのかの経緯は先ほどお話にもありましたが、ポニーキャニオンさんから打診をいただいてから、すぐに社内でもGOサインが出たのでしょうか。

斉藤:僕が聞かされた段階では、先方はもう「やります」という温度感でした(笑)。そこで、最初に僕が作った企画書では5分×12本での構成を提案したんです。これには、もし社内の他スタッフのリソースがあまり割けなくても、僕一人でもキャパ的になんとかできるボリュームにするという意図がありました。

でも、いざ蓋を開けたら30分×12本でやりたいと(笑)。それは厳しいのでは?という話は社内でも出たんですが、より『空色ユーティリティ』という作品を広く届けていくことを考えていくと、このスタイルのほうが色々と動かしやすいという話をされて。「そうなんだ」と納得しました。

当時ポニーキャニオン(現HI Production)の伊藤プロデューサーは凄くゴルフがお好きなんです。そういった方が、僕の個人SNSでのイラストや短編アニメを観て、「可能性を感じた」と熱い言葉をかけてくださったのが自分の心に響いたというのも、大きな要因でした。

当初、ビジネス視点ではオリジナル作品は難しいのでは、という考え方ももちろんありました。でも、メーカーさん側が作品へと強い興味や熱意を持ってくださっていること、またスタッフからも「自分たちのIPを信じられなかったら、今後どうするんだ」という強い意見もあったのが後押しになりました。

――:短編とは地続きでスタートした企画ではあるけれど、チャレンジングな部分も多い。そういう感覚だったのでしょうか。

斉藤:そうですね。僕自身、短編『空色ユーティリティ』で初めて監督を経験して、そこから今回はTVシリーズとしても監督に初挑戦をしました。当初は別の人を立てて欲しいなと思っていましたが、でも僕が出した企画だからやらないわけにはいかない、という責任感もあってチャレンジし始めたという感じです。いざ挑戦し始めたら毎日が早かったですね。

:作っている途中で他社さんのゴルフアニメが複数出てきたり、想定外のこともありましたね(笑)。

――:(笑)。

斉藤:僕らとしては、題材は同じゴルフだけどそれぞれ毛色は全く違うものとして作られているので、そこまで心配する必要はないと感じていました。むしろ協力してゴルフアニメ作品を盛り上げようという雰囲気も出てきて、そこで広報・宣伝担当の人たちが凄く頑張ってくれたこともあり、コラボビジュアルや応援イラストを描いていただけました。各社が協力し合って一緒に界隈を盛り上げていけるのは素晴らしいことだし、何より純粋に楽しいなと思いましたね。

――:稲垣さんからはTVアニメ『空色ユーティリティ』の制作周りはどのように映っていましたか?

稲垣:社内で他タイトルも並行して走っている中、完全に1から斎藤くん一人で作るとなると物量が恐ろしいことになってしまうので、そこに関しては社内のリソースはもちろん、シリーズ制作協力で入っていただいたスタジオリングスさんも含めてうまく連携を取りながら、安心してお任せすることができました。

スタジオリングスさんだけでなく、これまでの作品でご一緒してきたキャンディーボックスさんもそうですが、昔からよく知る仲間が我々の作品を一緒に作ってくださるというのは本当にありがたいことですし、そういった機会が出来るのは良いことだなと思います。

斉藤:始まる前からリソースの部分は目に見えて分かってはいたので、そこを見越した物作りをしよう、っていう指標がまず僕の中にありました。脚本作りの段階で、作画リソースが高くなる作品になるかどうかはある程度コントロールできるんです。例えばめちゃくちゃ感動的なストーリーものを作ろうとなると、どうしても絵的にもそれに見合った説得力を持つ、ハイクオリティなものが求められてきます。

今回はそうではなく、リソースの部分も含めて、自分たちが今できることを地に足つけて積み重ねることを『空色ユーティリティ』ではやってみようと。なので、絵コンテの修正の時も最悪自分で全部描けるものにする、という基準でチェックをしていました。

――:そういった部分も含めて、設立当初に思い描いていたYSPの将来的な発展へ向けて、理想的な動きや積み重ねができているという実感はあるのでしょうか。

斉藤:理想とまでは言えないまでも面白い試みとかやり方、新しいやり方が『空色ユーティリティ』で見えた部分は結構ありました。そういった意味で、特に印象的だったのはオープニング映像の制作ですね。当初想定していたよりも絵コンテ制作期間を短くする必要があったのですが、なら「みんなの力を集めてその場で決めていこう!」と、4人ほどのスタッフで会議室に集まって。その場で音源に当てはめながら、ああでもないこうでもないと案をワイワイ出し合って、結果として1日でまとめることが出来たんです。

その後の清書作業も含めて2日くらいで絵コンテを終わらせて、翌週には作画に入ることが出来たのですが、これは新しい作り方だなと思いました。実際、短めの映像であれば良い作り方じゃないかなと思います。一人で考えるより皆のアイデアを少しずつ吸い上げて、それを取りまとめる人が一人いれば割と良いものができるし、自分になかったアイデアも出るし、何よりも速い。単純に脳が何個もあるような感覚で作業できたので、かなりタイムパフォーマンス的にも良いものにできたんじゃないかと思います。

――:この記事を公開する1月31日の夜には、第5話が放送となります。より物語が盛り上がっていくタイミングかなと思いますが、既に視聴してくださっている方はもちろん、これから観てみようという方にも向けて、ぜひ注目してほしいポイントはありますか?

斉藤:『空色ユーティリティ』は、のんびり見られるものを作りたいというのが一番最初のコンセプトとしてありました。夜に家へ帰ってきて、何も考えずに、ただ純粋に楽しんでもらえるものを届けたい。そんな想いを載せて作っています。ドキドキやワクワクは少ないかもしれませんが、見る人の癒しになれば良いなと思いながら作っている作品なので、そういったものを求めている方には凄くオススメです。

:(無言で大きく頷く)

――:李さんとしても、『空色ユーティリティ』はそういった作品に仕上がっていると(笑)。

:心の雑念を全部捨てて、それだけを見て単純に感動できる作品になっています。色彩の選定も鮮やかなので、見ていて気持ち良いです。

斉藤:実際、練習場とゴルフ場で色彩のテイストを少し変えているんですよ。練習場に行った時はもっと色鮮やかに、彩度を高めにしているんです。

:そういった意味では、YSPは作品のトーンが暗いものもありますし、幅広いジャンルに対応できてきました。2025年は『空色ユーティリティ』だけでなく、『戦隊大失格』2ndシーズンや『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』の放送も予定しています。アニメ会社として絶えず動き続けているのは、よくやっていると思います。

斉藤:『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』に関してはスケジュール的にも余裕を持って組んでいただけましたし、原作であるHypergryphの方々ともかなり親密になってコミュニケーションを取りながら作業できたことで、クオリティをさらに上げられたかと思います。

:これまでの2シーズンを経て、原作側とスムーズに意思疎通ができるようになりました。そこも大きなプラスポイントだと思います。最初はゲームとアニメ、媒体が異なることでの魅せ方やできること/できないことの違いだったり、限られた尺の中でどこまでの情報量を映像へと落とし込むのが適切かに対する認識のすり合わせなどで、ぶつかりあって難航したこともありました。

稲垣:Yostar Picturesは、元を辿れば『アークナイツ』のアニメPV制作をきっかけに始まった会社と言えますし、5年目の集大成を見せられる作品になっているのかなと思います。

Yostar Picturesの10周年に向けて

――:では最後に、次の目標となる設立10周年を見据えた展望や意気込みをお願いします。

斉藤:今までは「最終的に自分でなんとかできればいい」という部分もあったのですが、特にTVアニメ『空色ユーティリティ』の制作を通じて、自分だけじゃなく他の人にもできることを分散していくことの重要性も強く実感したので、今後はもっと後進の育成にも重点的に取り組んでいきたいと思います。

というのも、『空色ユーティリティ』では監督・キャラクターデザイン・総作画監督の3つの役割を抱えていたので、やらきゃいけないことがたくさんあり、それで周囲へと迷惑をかけてしまうこともあったんです。この3つを自分一人で賄えると確認のやり取りがほとんどいらなく、スピード感を持って進めることができるので、短編1本のボリュームでは効率が良かった。でもTVシリーズの長丁場では作業量が全く違うし、なにより監督としてじっくりとこだわりたい部分もでてきます。そういった時に、例えば絵の部分を周囲へ完全に任せられると凄く助かるだろうなと実感したので、会社全体の底上げに取り組んでいきたいという考えが大きくなりました。

:我々はまだまだ新参者です。この5年間でいろいろな会社さんとの付き合いを経て、いろいろな人脈を築いたうえで、真っ当なアニメ制作会社として認識され始めている段階だと思います。そこから次の段階として、いろんな会社と面白い取り組みができるようにしていきたい、という想いがひとつあります。

基本は「Yostarのタイトルに紐づかなくても、ひとつのアニメ会社として生き残れるようにする」という最初の目標は変わらず、このまま突っ走っていきたいです。

あともうひとつ、Yostarの既存ユーザーが満足できるような映像作品をさらに作れると嬉しいと思っています。今回の『空色ユーティリティ』も喜ばしいチャレンジになりましたし、今後もユーザーの声を拾い上げて、皆さんに喜んでいただけるタイトルを増やせたら良いですね。

稲垣:YSPには他社制作でのタイトルにはなりますが、大ヒット作品に監督として参加した小林寛さんなど、素晴らしいスタッフがまだまだ社内にいます。そんな方々と一緒に、組織作りも作品制作もひたむきに頑張っていけば、また気づけば10周年になっているように思います。その道中には色々な壁もあると思いますが、そこで負けずに頑張っていけたらと思います。


この記事をシェアする